『Love True』

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『Love True』(2016)

監督:アルマ・ハレール

撮影:アルマ・ハレール

製作総指揮:シャイア・ラブーフ

 

 性別や住む場所、人種の異なる三人の若者を追ったドキュメンタリーである。

ストリップクラブで働く25歳のBlake、家族で歌を歌いお金を稼いでいるVictory、腹違いの息子を育てているWilliamがそれぞれ語る。

   Blakeはストリップクラブで働いていることで恋人に相手にされなくなることを度々経験しているが、現在の恋人であるJoelは彼女にとって特別な人だと感じている。Victoryはまだ10代で両親が離婚したことによる環境の変化を未だ受け入れきれていない。そして、Williamは自分の子だと思い愛情を注いでいた息子が自分と血が繫がっていないことを知り、心にわだかまりを抱えている。

 彼らの回想が始まると、画面が一転してその様子が俳優によって演じられる。このことによってスムーズに彼らの話す状況が広がり、退屈させない。また、ドキュメンタリーなので会話が基調となっているが、構図が素晴らしく全く飽きない。本当に同じ構図で話すことがなく、ショットのサイズを上手く加減している。凄い。また、かなりの部分を固定カメラで撮っていて、カメラのブレによって観客の感情を呼び起こそうとしていないのが個人的に良かった。

 Blakeが石から作られたような人形が座っている作り物のバスに子役と顔を寄せ合って座っているのが印象的だった。過ぎ去った出来事が癒えない傷として残っていることを上手く表現していると思った。

 スクールバスでいじめられている姿を子役を使いながら再現しているシーンをBlakeがいたたまれない表情を浮かべて見ている姿や、ストリッパーとして働いていたが5ヶ月前に引退した女性が年をとったBlakeを演じたことで何か変わったと話す姿、そしてVictoryの母親を演じる女優が話に聞いている母親を思い浮かべると何故別れることになったのか納得がいかないと悩む姿もドキュメンタリーに組み込まれている。このよう第三者を介入すること、彼らを演じることでそれまで彼らに同調していた観客に新たな視点を開かせる機能を働かせるとともに、箱庭治療的なセラピーの要素もあるように感じた。

 ストリッパーとして働くことで、それまでとは異なり欲望の対象となることを快く感じるとともに人が離れていってしまう原因ともなっていることに折り合いをつけられず悩むBlakeやストリッパーとしてキャリアを積むことを結婚よりも優先した女性が50歳を前に引退したことを話している姿から彼女たちが自分の職業と周囲の反応、誇り、加齢といった女性を取り囲む問題に答えを出せずにいる様子が映画全体の中でも最も他人事とは思えなかった場面だった。

 終盤にJoelと別れたBlakeが彼のことを考えないように努めていたのに、大量のスープを前にふとJoelに分ければ良いやと思ったことを泣きながら話す姿に思わず私も泣いてしまった。そして、それ以前に彼や彼の家族に気に入られようと思い大学に進学しようと思っていると話していた彼女が大学に足を運んで失恋から前進しようとしている姿を見て、救われた気持ちになった。

 そして、別れてもなお彼のことを一生愛し続けると言うBlakeや父親の暴力によって母親が別れを決意したことを知ってもなお自分は母親のおかげで存在すると言うVictory、息子を人前に見せるのを躊躇うこともあったが彼を連れて回ることに喜びを感じているWilliamを通して愛は呪いでもあり、同時に救いでもあることを改めて感じる作品だった。

 最後には現実を受け入れ、愛して生きることを肯定する、と言うかそうすることが最良なのだと感じる映画だった。