『エル・クラン』

 

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『エル・クラン』(2015) (原題:El Clan)

監督:パブロ・トラペロ

脚本:パブロ・トラペロ

製作:ウーゴ・シグマン ペドロ・アルモドバル

音楽:ビセンテ・デリア

撮影:フリアン・アペステギア

編集:アレハンドロ・カリーリョ・ペノビ パブロ・トラペロ

 

 1980年代初頭に実際にアルゼンチンで実際に起こった事件を基に作られている。

 照明が非常に良い仕事をしていた。家庭での日常生活を描いているシーンや息子の開店パーティーのシーンなどで部屋の明るさや光の当て方、人の顔に当たる光と影が丁度いい塩梅だった。中でも、留置所での親子が対立する場面では、光と暗闇の演出が見事だった。また、音楽もポップな音楽と不安がらせるような音色の音楽が見事にシーンと合っていた。一方でカメラの動きがほぼ前後運動のみで、しかもそれは人物の後ろ姿を追うときに主に使われることに限られていて、カメラの動きに工夫が見られないのが残念だった。そのためショット数の多さで状況を描写していて、私はあまり好きではなかった。ただ、ショットの数を多くすることで誰かの記憶を断片的に覗いているように感じさせる効果があった。これは実際に起きた事件を基に作られているため、このような作りはあながち間違ってはいないと思う。

 ここではあまり事件の動機は問題ではなく、父と息子の従属関係が取り扱われている。割と裕福な家庭が富裕層を狙った犯罪なので共通点はあまりないが、階段が被害者と加害者の暮らす場を線引いているという点で『パラサイト』が思い浮かんだ。

 獄中で父親が司法試験の勉強をして、その後弁護士として働くのは驚いた。誘拐の計画立てや息子への威圧、逮捕後の態度などから只者ではないと感じていたが、現実は想像を超えてくるから面白い。